いいかげん日記

思いついたことをただひたすら書き殴るいいかげんな日記です。

本の林:「ニヒリズムとテクノロジー」 ノーレン・ガーツ 著、翔泳社

 

本の林:はじめに

 【連想する本】

■「人間の条件」 ハンナ・アレント筑摩書房

■「大衆の反逆」 オルテガ・イ・ガセット、岩波文庫

 

最近は仕事関係の本ばかり買っていて(読んでいるかはまた別)この企画から遠ざかっていましたが、WIREDのネット書評を読んで心に引っかかりを感じたので久々にこういうジャンルの本を読んでみました。

 

途中で読まなくなるかもな、とも思っていましたがすぐ引き込まれて一気に読了してしまいましたね。

 

この本の内容としては、昨今のテクノロジーの発展と、それがもたらす世界レベルでの人々のふるまいの変化について考察するものです。

人間の本質に関するニーチェの洞察を下敷きに、ハイデガーやハンナ・アレントや現代の思想家(と呼んでいいのか?)の主張を解説しながら著者自身がもつ現代人の在り方に対する根源的な「危機感」を表明しているように読めました。

 

人々が遭遇する日々の困りごと、課題がテクノロジーによって「解決」されていくように見えるが、それは本質的には問題の「回避」や苦痛の「緩和」にとどまっており、それ故に、問題はさらに大きくなって再び人々の前に現れる。

 

自分の活動は「~のために」の無限ループの中のごく一部を担うに過ぎず、どこまで行っても自分の成したことが何かの手段に成り下がり、決して最終目的に到達することがない状況で理由もわからずただ足掻き苦しんでいる。

 

そのある種滑稽な構造を俯瞰して描いた上で「で、あなたの生きる意味は何だ?」と問うているような、そんな印象を受けました。

 

これは突き詰めると「人間とはどうあるべきか」や「私はどう生きるべきか」という、人類が何千年も絶えず考え続けてきたテーマなので、そこから導き出された過去の偉人たちの洞察(人間の弱さ、傾向、習性)は現代の人々のふるまいを驚くほどよく説明できています。

 

テクノロジーの発展が人類の発展と同一視される世の中で、新しい視座(実際は新しくも何ともないのですが)を与えてくれる本だと思います。

 

 

やっぱり、人を導く立場の人はテック系の第一人者ではなく、人間のことをよく考えている人であるべきだなぁ。