本の林:「投資家が「お金」よりも大切にしていること」 藤野 英人、星海社新書
【連想する本】
■ 「持続可能な資本主義」 新井 和宏、ディスカバー・トゥエンティワン
■ 「永遠の0」 百田 尚樹、講談社文庫
この本は、「ひふみ投信」という投資信託を運用する会社の創業者の一人である藤野 英人さんが書いた本です。
感想は、「うーん、良いこと書いてあるんだけど、広告本っぽいのが少し残念。」という感じ。
これ↓はもっとそうでしたが、やっぱり投資信託を運用している人が本を書くと宣伝したくなっちゃいますよね。
■「持続可能な資本主義」 新井 和宏、ディスカバー・トゥエンティワン
ただ、内容にそこまで商売っ気があるわけではなく、「お金の使い方=人生の哲学」というようなことを説いていて、素直にステキなことが書いてあります。
だから、そういうのもひっくるめて「良い本だね」と言えるのが大人の発言なのかもしれませんが、そこまで大人になりきれませんね。(やや潔癖症なのかもしれない。)
この宣伝の差し込み方は、どことなくこの本を連想します。
■「永遠の0」 百田 尚樹、講談社文庫
この小説、途中から泣きました。ただ終盤で、百田さんの思想(戦争観?)をさりげなく差していて、プロパガンダっぽくて醒めました。
私、百田さんの思想にはまったく共感しませんし、共感したくありませんが、この本を読んで、作家としてはすごい人だと思いました。(だからこそ、私は今後百田さんの本には近づかないようにしようと思っています。)
いや、書きたいのはそんな事ではなかった。
「投資家が・・・」の本の話に戻って、この一節をご紹介。
小見出しは「「ありがとう」はチップ」
日本にはチップの文化はありませんが、「ありがとう」こそがチップの役割を果たすのだと思っています。
ここで連想する本はやっぱりこれ↓
「男の作法」の「チップ」の節は何度でも引用します。
ここだけの話だけど、きみたちの小遣い、月にいくら?
(中略)
奥さんだって精一杯、余計に出しているに違いないんだが、もらっている身になってみれば、それは余裕をもって使えないわけですよ、いまの世の中は。
だけど、どうしても無理しても使わなきゃいけないんだよ。自動車のチップのことを話したでしょう、前にも。タクシーに乗って、メーターが五百円だったら六百円やる。
「どうもご苦労さん。これは結構です・・・・・・」
と、百円チップをやることによって、やったほうも気分がいいし、もらったほうも気分がいいんだよ。
もらったほうは、自分はわりに親切でもないんだけど、とにかくこの程度の運転をしていれば、お客さんが百円余計にくれるんだなとわかるわけでしょう。
これは、もう、大変なことなんだよ。
「男の作法」を読んでいるから、上に引用した「日本にはチップの文化はありませんが」という部分には賛成できない。今はないかもしれませんが、かつての日本にはチップの文化があったんです。
そして、チップを実践しているから、「「ありがとう」こそがチップの役割を果たすのだと思っています」という部分には、明確に「ノー」と言えます。
「ありがとう」の言葉はないよりマシですが、チップの有り無しでは「明らかに」、受け取った人の喜び方の度合いが違います。
本当に違うのです。
渡したこっちも嬉しくなるくらいに違います。
ホント、一回やってみてください。夜、飲んで酔っぱらって家に帰るとき、家に入る直前にタクシーの運転手さんに「ありがとう」と言って100円を渡すと、清々しい気分に浸りながら気持ちよく眠りに就けますよ。*1
「日本にはチップの文化がない」だから「「ありがとう」がチップ代わり」なんて、それこそケチくさい話じゃないですか。
チップの文化がなくったって、チップを渡すことはできます。
そして、チップの文化が廃れた今だからこそ、チップを渡す効果は絶大なのです。
普通に暮らしていれば、たまに「ちょっといいこと」がある。
そういうことをみんなが信じられるように、お互いがお互いに向けて投資できれば、こんなステキなことはないじゃないですか。
思うに、今の日本人は「投資」という行為が未だかつてなく、そして世界的にも極端に下手くそになっているんじゃないかな?
そんなことを考えながら読んだ本でした。
*1:たまに、「これ、お返しに」とアメちゃんをくれたりしますし 笑