本の林:「マッキンゼーが予測する未来」 リチャード・ドッブス 他、ダイヤモンド社 (4)
【連想する本】
この本の紹介も第4回目になりました。本当にいろいろなことを考えさせてくれます。
今回はこれからの仕事の在り方について。
まずは本の一節をご紹介。
たいていの成人は、学業を修めることにより修了学歴と、就職し職場で昇進していくスキルが身につけられる、と信じて育ってきている。だが、もやはその考えは現実的とは言えない。今日、40歳を過ぎた人々の多くが、大学を卒業したときには存在しなかった企業、いや産業ですら存在しなかったような分野で働いている。
(中略)
しかし、そうした課題も乗り越えられないものではない。過去の歴史上、新技術革命が起こり、爆発的な力が拡散していくたびに、人類はそれに適応し、新たに努力する方法を見つけ、繁栄してきた。少なくとも、この技術革新に適応するという長期トレンドだけは、不連続な傾向ではないのだから。
私が想像するに、これからスキルが陳腐化するスピードがどんどん早くなれば、「新たにスキルを獲得するよりも所有物から所得を得た方が確実」と考える人が増えると思うんですよね。
UberとかAirbnbとか、そういうシェアリングエコノミーが拡大してきているでしょ?
だから、こういうサービスを利用した副業やら兼業やらで複数の収入源を確保して自分の生活の安定性を高めようと思えば、いくらでもできるような時代になるんじゃないかな。
そうなってくると、これからの社会人は、「如何に所有物を収入源にするか?」という問題に取り組むようになると思うんですよ。
この問題の解決策には、もちろん伝統的な株式・債券・不動産投資や、クラウドレンディングみたいな新しいタイプの金貸しのように、「資産」から所得を得る方法も考えられます。
何かしら人に喜ばれるコンテンツを提供できれば、アフィリエイトや情報商材でもそれなりの収入が得られます。
その片手間で、クラウドソーシングでフリーのライターみたいな仕事をしてみたり、UberEATSでデリバリーしてみたりするかもしれません。
何が言いたいかというと、これから本格的に「持たざる者が淘汰される時代」に突入するような気がするんです。
スキルを持つか、収益源になるモノを持つか、ってのはストックを自分の中に積み上げるか、外に積み上げるかの違いじゃないですか。
そう考えると「スキルの陳腐化」って、保有する証券が紙くずになるのと似ています。
一つのスキルが陳腐化すると、次に要求されるスキルはより高度で獲得し難いものになる。
技術革新で、スキルが陳腐化するサイクルが早くなれば、普通の人はあっという間に労働市場から置いていかれます。*1
そうなると、
「頑張ってスキルを磨いても数年で陳腐化して使えなくなるのなら、何もしなくても勝手に稼いでくれる「何か」を所有することで生活費を賄った方がいい」
となりませんかね?
人間、楽な方に流れますから、主要な産業の仕事に求められるスキルの獲得が困難になれば、そういうところへの就職そのものを諦めますよ。
まぁ、そうなる前に企業側が高度な仕事を分解して、要求するスキルレベルを「普通の人にとってぎりぎり手の届く」程度まで落としてくるかもしれないけど。
この考え、極端?
*1:小学校でプログラミングを必修化する(した?)みたいですし、子ども向けのプログラミング教室が人気みたいですけど、今の子たちが就職する時に、プログラミングのスキルがどの程度の市場価値をもっているんでしょうね?
もちろん、基礎知識としては必要だと思います。そういうものに慣れ親しんでいれば世の中の仕組みを深く理解できますから、教養としては極めて重要です。
が、「手に職を」というような考えでプログラミングスキルを身につけさせるくらいなら、金融リテラシーを身につけさせた方が遙かに役に立つと思う。。これは本当に不思議でならないんだけど、大人になれば全員が必ず直面する「お金」の問題について、子どもの頃にちゃんと勉強させないのはなぜ???