いいかげん日記

思いついたことをただひたすら書き殴るいいかげんな日記です。

本の林:「マッキンゼーが予測する未来」 リチャード・ドッブス 他、ダイヤモンド社 (2)

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本の林:はじめに

 

【連想する本2】

■ 「人間の条件」 ハンナ・アレントちくま学芸文庫

 

前回に引き続き、「マッキンゼーが予測する未来」という本の紹介です。

 

今回は、この本の中の一節をご紹介。これは、世界の資源に関する今までのトレンドを振り返る記述。

 21世紀の夜明けが始まる頃、永続的かつ強力な力が世界の舞台に登場した。エネルギー、金属、食料、それに水を含む必須需要財の実質価格が、20世紀の間にほぼ半分に低下した。

(中略)

 この価格水準の低下は、生活水準の向上とエネルギー密度により、必須財の需要が6倍から20倍に押し上げられたことを考慮すると、いっそう注目に値する。

 それは、蒸気機関の鉱山での利用、農業における機械化の普及、巨大ダムの建設などによる著しい生産性の向上により、人類が生産、流通、商業、および商品を保管しておく活動を、有効にコントロールすることが可能となったからである。

 

 「保管」

これこそ、人類の生産活動の拡大を可能にした本質的な要素だと思います。

 

人類の生活を向上するための一番の基礎は、結局のところ、

「人間の一生の長さと比較して、あらゆるモノの耐久時間をどの程度長くできるか?」

これですよ。

モノの耐久時間が短い場合、そのモノを使い続けるためには、そのモノを調達することに多くの時間を割く必要がある。

 

たとえば、食糧。

肉や野菜は、調達してから外に数日間放置すると腐って食べられなくなる。

このような食材の耐久時間は、人の一生(80年くらい?)と比較してあまりにも短い。

そのくせに、生産には数ヶ月〜数年単位の時間がかかるのだ。

 

だから、そういうものを食べ続けるためには、継続的に生産し続けるしかない。

 

 

けれど、現代では、冷蔵、冷凍、缶詰めや瓶詰めなどなど、多くの保存技術が利用できる。だから、一度に大量に作って保存してしまえば、しばらくは食糧の生産をしなくてよい。

 

食糧の生産から解放された時間は、それ以外の別の活動ができるのだ。

このことは、あらゆるモノについて言える。

 

結局は、作ったモノの耐久性を最大限に引き延ばすことが人類の発展に貢献する。

 

この点に触れているのが

「人間の条件」 ハンナ・アレントちくま学芸文庫

です。

 

もう一節ご紹介。これはインドの発展の阻害要因について述べた一節。

 ムンバイの、これ以上乗客を詰め込めないほどに混雑した通勤列車は,今では伝説級の話題となっている。(中略)毎年,ムンバイだけで推定3500人,つまり毎日ほぼ10人が,鉄高関連死亡事故の犠牲者になっている.こうした悲劇的な人命コストに加え,過剰な混雑状態とその事実が示しているインフラストラクチャー投資の不足は,驚嘆すべき「インドの成長物語」自体をも脱線させてしまう可能性がある.

 

こういう状態を「インフラストラクチャー投資の不足」と表現することが新鮮でした。

なるほど、確かにこれは「不足」だ。

 

ここで触れているインフラストラクチャーというのは、多くの人に便益を提供するものでありながら、耐久時間が極端に長い。

 

 

だから重要なのだ。

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