いいかげん日記

思いついたことをただひたすら書き殴るいいかげんな日記です。

本の林:「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」ライアン・エイヴェント、東洋経済新報社 (1)

【連想する本】

■「発酵の技法」サンダー・エリックス・キャッツ、オライリー・ジャパン

■「接続性の地政学 上」パラグ・カンナ、原書房

 

前回の記事を書いてからすぐ、東京駅に行く機会があったのでふらっとオアゾ丸善に寄って本を物色して引き当てた本をご紹介。

 

中身をほとんど見ずに買いましたが、「前回の記事を書いてからこれを引き当てたか」と思うほどタイムリーな一冊でした。

我ながら「良本を引き当てる目はあるな」と密かに自信を深めているところです。(勘違い)

 

さて、この本をご紹介する前にAmazonの紹介文(の一部)を引用します。

★英『エコノミスト』誌シニア・エディターが予測する働き方の未来!
★大部分が自動化され、高学歴でも仕事を奪い合う世界で、私たちは何をなすべきか?
★トマ・ピケティ絶賛!

デジタル革命による自動化、グローバリゼーション、スキルの高い少数の人間の生産性向上により、労働力が余る時代となった。

●私たちはどのように働けばいいのか?
●子どもの教育はどうすればいいのか?
●なぜソーシャル・キャピタルの重要性が高まっているのか?
●労働力余剰により政治はどう動くのか?
ベーシックインカムは有望か?
●私たちは産業革命の経験をどう生かすべきなのか?
●人類の富をどのように分配すべきか?

現場取材と最新データ、テクノロジーの大転換の歴史を踏まえ、気鋭の論客がデジタルエコノミーにおける働き方、政治、社会構造を見通す意欲作。

 ということで、どんな内容かは想像つきますでしょうか?

タイトルは煽りが入っていて若干この本の本筋と違う印象を与えてしまっているような気がします。

 

タイトルから受けるチャラい印象とは裏腹に、経済の基礎をきっちり押さえた地に足付いた議論がなされている印象を受けました。(って言っても私は素人なので「そんな気がした」というだけですが…)

 

この本の裏表紙には「THE WEALTH OF HUMANS」と書かれているのでおそらくこれが原題です。

 

…いや、まぁ、そうですよね。

そのくらいマジメな本ですよ、これ。

 

日本ではこのくらいの煽りがないと売れないのかもしれませんが、個人的な印象として、この邦題は損していると思います。(とはいえ、私はこのタイトルで買ったのでこんなものなのかもしれませんが。)

 

この本が扱っているテーマを私なりに紹介するとしたら、

労働市場ダイナミクス

ソーシャル・キャピタル

「富の偏在と再分配」

「(企業)組織の有機性」

ですかねぇ。

こうやって書くと、経済学のかなり根本的な話を扱っていますね。

 

正直、上の紹介文にある「ベーシックインカム」なんておまけというか、それよりももっと根本的な部分について掘り下げて考えた結果として浮かんでくる「将来取り得るオプション」の1つとして書いてあります。

 

だから、ベーシックインカムそのものの是非を議論してわかった気になるような話じゃなくて、「なぜベーシックインカムが議論され始めたのか」っていう文脈がおぼろげに、なんとなく掴めてくる、って感じ。

 

他の話題も同じで、上の紹介文から連想されるような「これからの働き方」や「子どもの教育」の「How to」というよりも、「How to」を考える材料を語ってくれている感じ。

 

先の見えない時代に生きている私たちに、(真偽のほどは定かではありませんが、それでも)今、世界中で起きているテクノロジーの発展とそれによってもたらされる経済環境の大きな変化についての世界地図(鳥瞰図?)を見せてくれる本だと思います。

 

だから、これを何回か読んで内容を咀嚼してから新聞を読むとニュースの文脈がはっきりとわかるようになるんじゃなかな。

 

「あぁ、政治家の人たちはこんなような文脈の中で話をしているんだろうなぁ」

 

というのがなんとなくわかった気がした本でした。

 

 

で、私が特に頷きながら読んだ内容を少しだけご紹介。

これは企業の文化とその機能性についての記述。

 大企業の社員は、日々進化する企業文化の中で働いている。入社すると、日常の業務がどのように回っているかについていろいろ覚えていくが、正式な研修に組み込まれているのはその一部に過ぎないだろう。

(中略)

 私の職場である1843年創刊の週刊誌『エコノミスト』には強い社内文化ができあがっていた。幅広いビジネス・プラクティスと複雑に絡み合った1週間の制作リズムもだ。

(中略)

仕事の回し方の大まかな感覚はベテラン社員の頭の中に生きている。その知識をあとから入った社員が、古くからの習慣に長年接するうちに、時間をかけて吸収していく。私たちの会社は週刊誌を作成するビジネスというより、膨大なプロセスの集積でできた一つの仕事の流儀なのだ。そのプログラムを走らせると、最後に週刊誌ができる。

 

「そのプログラムを走らせると、最後に週刊誌ができる。」

 

この表現は痛快ですね。

 

機能している企業には「からくり」がしっかりと出来ていて、開始の合図があればパタパタとタスクがこなされていき、所定の時間が経過すると所定のアウトプットが飛び出して「からくり」が止まる。

 

そんなイメージが浮かんできます。

 

実際にタスクをこなしている当の本人からしたら、「そんな簡単じゃない!」あるいは「そんなに簡単に言うな!」と怒鳴りたくもなりますが、傍から見るぶんにはまさにこんな感じですよね。

 

あー、この本についてはまだまだ書けるけど一度ここらへんで締めましょう。

 

続きはパート2で。(結局、連想した本の紹介ができなかった。笑)

 

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか