いいかげん日記

思いついたことをただひたすら書き殴るいいかげんな日記です。

本の林:「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」 ルイス・ダートネル、河出書房新社

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本の林:はじめに


【連想する本】

なし


この本は、高度に発展した現代の科学文明が、なんらかの原因で破壊されてしまった場合、残された人類が文明を「再起動」するのに必要最小限の知識は何か?ということについて考え、記述することを目的とした本です。

つまり、ほとんど魔法のような現代の科学技術の装飾を一つ一つ剥がしていって、最後に残る現代文明の「中核」は何か?という問題について考察しています。

この本、小学校か中学校の教科書にしてもいいくらい、良い本だと思います。自然科学系や工学系の基礎的な教養を身につける本として、名著だと思います。
私が校長先生なら、夏休みの課題図書くらいにはするでしょうね。

なぜなら、学校で勉強する理系科目の内容が、人類にとってどのような意義があるのか(あったのか)、を明確に示しているから。


例えば、私が高校生だった頃の化学の授業では、「ハーバー・ボッシュ法」を教わり、アンモニアの合成に必要な材料や合成過程の化学式を勉強しました。
しかし、「ではなぜ、無数にある化学合成法の中から、ハーバー・ボッシュ法を、専門的な教育機関でない普通科の高校で教える必要があるのか?」という問いは提起されませんでした。

アンモニアは、農作物の肥料の生産に使われる。
ハーバー・ボッシュ法が発明されたことによって、効率的にアンモニアを生産できるようになった。これによって、痩せた土地に人工的に窒素を注入することが可能になり、農業の生産効率が飛躍的に向上した。

「人類にとって、アンモニアの生産は、食糧の確保に直結する死活問題だからこそ、君たちに真っ先に教えるのだ」

なんて話、化学の授業ではしてくれなかったなぁ。

でも、そういう背景を知らずに「ハーバー・ボッシュ法」の中身だけを勉強することに、一体どれだけの意味があるのだろうか?


今の時代、個別の知識はその辺に転がっている。
だから、中身だけを勉強したところで、その人の職業人としての価値が高まるような時代でもないと思う。(せいぜい、テレビ番組で出題されるクイズの正答率が上がる程度でしょうか?)

だからこそ、この本のように、個別の要素技術の社会的な意義や、要素技術間の繋がりについてもっと真剣に勉強した方がいいんじゃないかな。


今後、私に子どもができたら、ぜひ読ませたいと思う本です。